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「窮鼠はチーズの夢を見る」ネタバレありレビュー!登場人物の”クズ度”ランキングも

この記事がこんな人向けです

◆「窮鼠はチーズの夢を見る」が面白いか知りたい人

◆「窮鼠はチーズの夢を見る」の感想を共有したい人

2020年9月11日に公開された「窮鼠はチーズの夢を見る」。水城せとなのコミックスが原作となっている本作は、イケメン×イケメンが生々しく絡み合う映画として話題になっています。

私(筆者)は男性でかつゲイではないですが、この映画はいろんな意味で印象的な映画でした。イケメン同士のラブシーンに限らず、優柔不断が生む「不幸」を反面教師的に教えてくれる良作だと考えています。

この記事では、前半では”ネタバレなし”の総評、後半では”ネタバレあり”のレビューや考察をご紹介します。特に、この作品に登場する登場人物の”クズ度ランキング”は、ぜひ見て欲しいです。

「窮鼠はチーズの夢を見る」とは?

2020年9月11日公開/130分/R15/監督:行定勲/出演:大倉忠義、成田凌、吉田志織 ほか

水城せとなの人気漫画「窮鼠はチーズの夢を見る」「俎上の鯉は二度跳ねる」を、行定勲監督が実写映画化。

BLマンガの実写映画化とのことで、女性向けの作品に思いがちですが、「人を想う純粋な愛」を描いた作品。原作とは違う結末を迎えるところも注目のポイントです。

公開年月日 2020年9月11日
制作国 日本
上映時間 130分
年齢制限 R15
監督 行定勲
出演(声優) 大倉忠義、成田凌、吉田志織、さとうほなみ、咲妃みゆ、小原徳子

あらすじ 女性に対して受け身な性格の大伴恭一(大倉忠義)は、不倫を繰り返してきた。そんな大伴の前に現れた今ヶ瀬(成田凌)は、大伴の妻から派遣された浮気調査員だった。不倫をバラされたくない大伴に、今ヶ瀬は「昔からずっと好きだった」という衝撃の告白をするが・・・。

>>「窮鼠はチーズの夢を見る」公式サイト

「窮鼠はチーズの夢を見る」の感想(ネタバレなし)

オススメ度:

この映画のポイントは、

  1. 大倉忠義×成田凌 イケメン二人の濃厚なラブシーン
  2. 俳優・女優陣の演技は素晴らしい!
  3. しかし、映画としてのメッセージ性は「?」

大倉忠義×成田凌 イケメン二人の濃厚なラブシーン

まずこの映画、大倉忠義と成田凌との”濡れ場”はかなり生々しく濃厚です。普段あまりゲイ映画を見ない私にとっては、なかなかに刺激の強いシーンの連続でした。筆者(男性)は、ゲイへの偏見はないですが、やはり男同士がキスしたり裸で抱き合って性行為をするシーンは、どうしても生理的に嫌悪感を感じます。

女性は男性同士のラブシーンが好きな方もいるかもしれません。実際に、私が鑑賞したときは劇場のお客さんの9割が女性でした。もちろん、女性全員がイケメン同士のラブシーン目当てではないでしょうが、そういったシーンが好きな方には、この映画はピッタリかもしれません。

俳優・女優陣の演技は素晴らしい!

主要な登場人物は全6人でしたが、彼ら彼女ら全員の演技は素晴らしかったです。この映画全体の切なさや息苦しさを、見事に演出していました。

成田凌演じる「今ヶ瀬」が9年間、好きな男性を片思いしている姿は、狂おしくもありまた美しいと感じました。

夏生役を演じた「さとうほなみ」はゲスの極み乙女でドラマ―を担当している女性。夏生の「男勝りで明るく社交的だが、腹黒い」役どころを見事に演じ切っていました。個人的に、夏生は本作品で一番好きなキャラクターになりました。

映画のテンポはちょうどいい速さ

映画のテンポは、ストレスなくちょうどいい速さで進んでいきます。テンポがいいため、「展開が遅くてイライラする」ということはありません。

大倉忠義と成田凌のラブシーンは話の中盤以降かと思いきや、かなり序盤(開始数分)で登場します。展開が早くて驚きましたが、その後も、ポンポンと話が進んでいき、ストレスなく見ることができます。

映画としてのメッセージが「?」

しかし、この映画が伝えたいメッセージが、私にはよく分かりませんでした。少なくとも、「真実の愛とは?」を問う映画ではなかったと思います。というのも、後半の”ネタバレありレビュー”でご紹介しますが、登場人物はほとんど「クズ」ばかり。彼ら彼女らの行動からは、とうてい「真実の愛とは?」を見出すことはできません。

あえていうならば、大倉忠義演じる「恭一」の”クズっぷり”を見て、反面教師的に「優柔不断な愛は関わる人すべてを傷つける」ということでしょうか。ただ、作品のラストではこの大倉忠義の「優柔不断っぷり」をどこか美化するような表現だったので、これもまた制作者のメッセージではないのかな?という印象を受けました。

見る人によって、受け止め方が分かれるでしょう。「この映画のメッセージは何なのか?」を考えるのも、この映画を見るメリットかもしれません。

映画館で見る価値はあるか?

「映画館で見るほどの映画だったか?」と言われると、正直そうでもなかったな、という印象です。

そもそも映画のテーマとして、デートや夫婦で見るような映画ではないでしょう。イケメン同士のBL映画に興味がある人はいいかもしれません。映画全体を通して音楽があるシーンも少なく、音響や臨場感目当てで、というのも薄いでしょう。

ただ、映画館だと大倉忠義や成田凌の息遣いが間近に感じられます。彼らのファンだという方には、映画館で見るメリットはあるかもしれません。

 

以下では、本作品のネタバレが含まれています。ご注意ください。

 

「窮鼠はチーズの夢を見る」のネタバレあり感想

この映画のメッセージは一体なんだったのか?

この映画を見る前は、「きっと恭一が今ヶ瀬と出会うことで、真実の愛を見つける」というテーマなんだろうと思っていました。ただ結局、少なくとも映画の最後まで、恭一は「真実の愛」を見つけることはできませんでしたね。

「え、でも婚約者だったたまきと別れて、今ヶ瀬を家で待つのが、まさに彼を愛してる証拠でしょ?」と思うかもしれませんが、あれは真実の愛ではありません。同じ過ちを繰り返しているにすぎません。

そもそも、今ヶ瀬は自分のせいで過ちをくりかえす恭一を救うため、自ら恭一のもとを去ったのです。それはたしかに、愛のある行動だったと思います。しかし、恭一はそんな今ヶ瀬の想いをふいにして、婚約者と別れ、「やっぱり今ヶ瀬を待つ」を選んでしまったのです。それは、とても「愛ある行動」とは思えません。

優柔不断は関わる人すべてを傷つける

この映画から学ぶことがあるとすれば、「優柔不断は関わる人すべてを傷つける」ということでしょうか。

恭一に近づく女性は、みんな恭一に好意を寄せています。恭一も、そんな好意をすべて受け入れてしまいます。恭一が誰かひとりに決めてしまえば誰も不幸にならないのですが、それができないのが恭一。

結果、奥さんとは別れ、かつての恋人とも愛想をつかされ、ゲイでもないのに男性を受け入れ、でもやっぱり男は無理と別れ、でもやっぱり今ヶ瀬じゃないとダメだと言い出し、そして婚約者とも別れ・・・。誰一人、幸せになっていない。

結局、流されるままに生きるとこうなるよ、というメッセージなのかもしれません。まぁ、男女問わずあれだけモテる男性というのも、あまり現実味がないですが。

登場人物ほぼ全員クズ

さて、そんな関わる人すべてを傷つける恭一ですが、悪いのは恭一だけかと言ったらそうでもありません。この作品に登場するほぼ全員、粒ぞろいならぬ”クズぞろい”です。

恭一だけを槍玉にあげるのもかわいそうなので、ここでは本作に登場するキャラ達の筆者的「クズ度ランキング」を発表します。

1位:恭一

もちろん、クズ度ランキング1位は、「恭一」です。優柔不断で流されやすく、結果的に関わるもの全てを傷つけます。今ヶ瀬に「お前とは、無理だよ」と言ったとき、一ノ瀬が「最初からそういってくれればよかったのにと言いましたが、まさにそのとおり。愛情を示してくれる人がいれば、流されるがままその愛情を受け入れてしまう。もはや病気。最後、婚約者とも別れ、性懲りもなく今ヶ瀬を部屋で待つが、おそらく今ヶ瀬は戻ってくることもないし、戻ってきたとして、また同じことを繰り返す。もうどうしようもない。

2位:知桂子

恭一の奥さん。序盤で恭一と離婚する。登場する時間は少ないが、やったことはクズそのもの。専業主婦として恭一の収入で好きに生活していて、恭一のお金を使って1年以上浮気をしていたくせに、「私とあなたの関係はお金を稼いで使うだけの関係」と相手を責め、離婚したいと言い出す始末。自分も浮気していたくせに、恭一の収入で恭一の離婚調査をするとか本当にひどい。

3位:瑠璃子

奥さんがいると知りながら、恭一と不倫をするスタンダードなクズ。元はといえば、この不倫相手がいなければ今回の話は起こりえなかったこと。ある意味、すべての元凶。ただ、恭一と瑠璃子のラブシーンは二度あるが、瑠璃子演じる小原徳子は、結構エロい。

4位:今ヶ瀬

主人公を9年間一途に思い続けてきたというが、果たしてそうだろうか?実際に、ちゃっかり自分を満たしてくれる恋人?(セフレ?)は作っていた。最後のシーンでも、(恭一に想いを寄せつつも)やっぱり男に抱かれている。そもそも、知桂子の依頼で恭一の浮気が分かると、それに付け込んで身体を要求してくる時点で、なかなかのクズ。恭一にした同じことを女性に置き換えてやったら、もはや犯罪ではないだろうか。

5位:夏生

本作の被害者1。久々に昔の恋人と再会して、よりを戻せるかと思ったら、かつての恋人はゲイに目覚めつつあったという、可愛そうな境遇。恭一を家まで送っていったら家から今ヶ瀬が出てきたときのショックはすさまじかったでしょう。今ヶ瀬を呼び出し、「主人公から手を引いて」と進言するシーンは一見すると「自分の好きな人を奪う」に見えるが、自分には「ゲイに目覚めつつある元恋人を普通の男性に戻そうとしている」だけにも見える。自分を選んでくれたと思いきや、「やっぱり一ノ瀬が気がかり」と言われ勃たない主人公に愛想をつかすのはしかたない。

6位:たまき

本作の被害者2にして最大の被害者。婚約者がゲイの道へ足を踏み入れたことを全く知らずに、恭一と婚約までするも、最後は「やっぱり元恋人が忘れられない」という理由で婚約破棄される可哀そうな女性。「その恋人が戻るまでそばにいさせてください」という彼女の一途ささえ、無下に扱われる始末。そもそも、そも「恋人」が男だということすら知らない。本作で一番まともな人間だが、まともがゆえにまともじゃない人に翻弄される本作最大の被害者。

「窮鼠はチーズの夢を見る」の口コミ・評価

高評価レビュー

https://twitter.com/robinfy3/status/1308709211904249856

 

https://twitter.com/Love_Movie0911/status/1309487711938514946

Twitter界隈では、比較的高評価のレビューが多いですね。

低評価のレビュー

原作を読んだ身としてはとても微妙でした。線になっていたところが点と点に離れてしまった印象。

キャストも微妙……大倉くんではないかなぁ。
大伴恭一はもっと流されやすくて、それをあせあせと言い訳するタイプだったんだけどなぁ。今ケ瀬の執着具合はもっとドロドロだったんだけどなぁ。

ストーリーも切って並べ替えて繋げたような、なぜそうなったのか理解出来ないものになっていた。

総合して言えば、期待してただけに残念。(引用元:Yahoo!映画

 

今ケ瀬が大伴をあんなに愛してる理由、大伴が今ケ瀬を愛するようになったきっかけや理由が全く描写されておらずついていけない。特に最後の岡村さんと婚約までいったのにやっぱり今ケ瀬が良いってなったのは何で?今ケ瀬と別れた時から何か劇的なアクションでもあったっけ?大伴がとりあえず自分を好きになってくれそうな人と付き合って簡単に捨てるような奴でしかない。ただのクズじゃん!!映画のたった2時間で原作のキャラの感情描写全てを入れ込むのは難しいと思う。でもそれなら代わりにもう少し濡れ場は減らしても良かったんじゃないかなー。もうこれただただセックスセックスって印象しかないよ。役者さんたちの体きれいだったね (引用元:Yahoo!映画

映画サイトのレビューでは、低評価がチラホラと散見されました。「心理描写が不十分」というのが、低評価の主な理由になっています。

まとめ

「窮鼠はチーズの夢を見る」のレビューを、ネタバレありなしのそれぞれでご紹介しました。

個人的な映画としての評価は「まあまあ」でしたが、本記事のレビューだけで4300字も書いてしまったことを考えると、やはり心に残る作品だったのかもしれません。

大倉忠義×成田凌のイケメン二人が絡み合うシーンはかなり濃厚だったので、好きな人にはそれだけで見る価値のある映画です。気になる方はぜひ劇場まで足を運んでみてください。